2005年12月07日

短編作品 ギリシャ国境

惨めと言わずに最後までお付き合い下さる方に、予めお礼を申し上げます。
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時は1995年2月上旬。トルコからバスでギリシャへ入って、その後トルコへ再入国した時の想い出です。国境に近いアレクサンドロポリから同じルートを戻っては面白くないぞと地図を見ると、北のほうにトルコのエディルネへ通じるルートがあるじゃないですか! バスでアレクサンドロポリを出て、途中の街で乗り換えて、国境の街カスタニエに到着したのは午後でした。

女の子の一群が教えてくれた方向に歩くと、兵士が立っている国境の通過地点が見えてきました。兵士いわく、「明日の朝いらっしゃい。」「へ?」「今は閉まっている。明日の朝9時に開く。」国境通過地点はどこでも24時間やっているわけではないのを、初めて知りました。
「この辺に泊まる所はあるの?」「来た道を戻れば、ペンションがいくつもあるよ。」週末の国境通過は9:00-11:00の間だけなんだそうな。そう、あれは土曜日だった。

歩いてきたけど、そんな気配はまったくなくて静まり返った田舎町の風情だったと思いつつ、兵士の言うことに従うしか方法はありません。予約もガイドブックも何もなし。道端で花をいじっていたおばあちゃんに尋ねてみると、「αβγδεζ・・・」とまくしたてられ、しかも腕を強引につかまれて、ペンションとおぼしき所へ引っ張りこまれました。要は客をゲットしたんですな。サロンでは薪ストーブが赤々と燃えて温かい田舎の宿の趣き。

おばあちゃんはギリシャ語かドイツ語、こちらは英語で、会話にならないながらも朝食付きで一晩3000ドラクマということが分かり、他に宿を捜し求める気力もなく投宿することに。ま、いいや。夕食も出してくれるということになり、おかしいと思ったら夕食とは、湿気たビスケットが2枚にギリシャコーヒー。ちぇっ。お金も尽きてきていたので、外へ食べに行くこともはばかられ、買っておいたリンゴでしのぎました。

照明は怪しい20Wくらいの赤い裸電球ひとつ。ストーブをつけて欲しいと願ったら、薪代がプラス500ドラクマだと。ふざけてる。そんなの願い下げや! 早いとこふて寝するに限る。部屋に積んであった毛布の意味が、これで納得。あるだけの毛布を引っ張り出して毛布の山の中に埋もれるように眠りにつきました。

トイレは裏の離れにあったのでした。明け方しばれるところを、一度庭へ出て用を足しては毛布の山に走って戻ったのだから、笑えてしまいます。

朝起きたらサロンの薪ストーブの温かさが救いでした。朝食には期待もなにもしていなかったけど、またもや湿気たビスケットとギリシャコーヒー。これは夕べの悪夢の再来かも。そんな気分で、8時前には支払いを済ませて国境へ行って待つことにしました。「9時までいればいいのに」などと言われても、もう聞く耳はありません。

国境では当然一番乗り。タクシーが来てなにやらわめいたけど、どうぜ白タクだろう。完全に無視。歩いて兵士のいる車止めに行くと、「歩いて行くのは禁止だ。車に乗らなければいかん。」「車なんて持っていない。」「誰かの車に乗るか、タクシーに乗るんだな。」ああ、あのタクシーを追い返しちゃいけなかったんだ!「タクシーをここで呼べる?」「そこの街から電話で頼むんだな。ンkm先の町から来るよ。」

唖然。そんなことしたら今日もここに留置きだ。困る!と思った瞬間、タクシーがやってきました。「トルコ側へ行きたい!」「3000ドラクマ」・・・これはきっとぼったくりに違いない。でも断る余地も交渉の余地もない。出費はかさんでも、いち早くトルコへ入るに限る。その一心でしぶしぶタクシーに乗り込むと、車は細い小川にかかる橋を渡り森の中へ。はぁっとため息をつくと、小屋が見えてきました。「着いたよ。」わずか1分弱でした。財布には丁度3000ドラクマくらいあったようで、それを払ったら忌まわしきドラクマはほとんど残りませんでした。

トルコの入国審査では日曜の朝からトルコ語を話す外国人が来たと怪しまれたようでもあり、森の中の審査所から近くの村まで歩いている間にも兵士に職務質問を受けたりはしたものの、小川の向こうでの半日に比べればなんてこたない。カスタニエへ行くことは二度とないでしょう。3000ドラクマがいくらだったか、後から確かめたこともありません。
posted by ムフテリフ at 22:07| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | トルコ回想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
にゃんだ、もっといい思いをしたのかと思ったら。。。。。
しかし、宿の夕食って言うのがすごすぎる。。。 彼女たちは何を食べてたの??

ところで、「にんげんバトン」なるものが回ってきました。 ムフテリフさんは唯一本物の私を知るブロガーなので(shibaさんもだけど彼女から回ってきたから)お願いしますう。
詳しくは私のブログで。
Posted by Nori at 2005年12月11日 20:02
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